完全菜食主義者の「ヴィーガン」に不足しがちな栄養素とは
健康的なイメージからヴィーガン(ビーガン)の食生活をはじめる人もいる反面、肉や魚を食べないため逆に栄養が足りず、不健康で栄養失調になるのではないかと心配になることも。ヴィーガンに不足しがちな栄養素について検証していきます。
ヴィーガンとは
ベジタリアン(菜食主義者)と一口に言っても、食べられる食品(避ける食べ物)によって分類されています。ヴィーガンもベジタリアンの一種です。
主な分類は以下のとおりで、他にも多くの分類の仕方があります。
ペスコ・ベジタリアン …… 植物性食品、魚、卵、乳製品は食べる。
ラクト・オボ・ベジタリアン …… 植物性食品、乳製品、卵は食べる。
ラクト・ベジタリアン …… 植物性食品、乳製品は食べる。
ヴィーガン …… 植物性食品のみを食べる。
ベジタリアンになる背景は、病気のため、健康のため、思想や宗教、スピリチュアル的な理由、環境保護のためなどさまざまで、ヴィーガンもまた同じです。
2016年にアメリカで約2000人を対象に行われた調査では、肉や魚などの動物性食品も食べる人が96.7%、乳製品や卵は食べるラクト・オボ・ベジタリアンが1.8%、植物性食品以外は食べない完全菜食主義者のヴィーガンが1.5%という結果でした。
厳格なヴィーガンははちみつや白砂糖も食べない
ベジタリアンの中でも最も厳格に植物性食品しか食べないヴィーガンですが、その中でも、より厳格なヴィーガンの場合は、はちみつや白砂糖も食べず、代わりにメープルシロップを使います。
はちみつは蜂の体液が混ざっている、はちみつの採取で蜂が犠牲になるといった理由などで、厳格なヴィーガンの間では動物性食品に分類されるのです。
白砂糖は、精白・精製の過程で、牛骨粉が使われている理由であったり、単に健康の理由から避けていることもあるようです。
ヴィーガンが不足しがちな栄養素はタンパク質ではない
ヴィーガンは肉や魚だけでなく、卵や乳製品まで食べないため、タンパク質が不足しそうなイメージがありますが、タンパク質は豆類や大豆ミート、豆腐などの大豆製品から必要量は十分に摂取できます。
不足に注意が必要な栄養素は「ビタミンB12」です。
ビタミンB12は「赤いビタミン」とも呼ばれ、赤血球をつくる働きに関与しています。また、神経細胞の核酸の合成に必要な栄養素で、認知症の人の脳にはビタミンB12が少ないと報告もあります。
ビタミンB12は野菜にほぼ含まれず、魚介類や牛レバー、鶏レバーなどに多く含まれる栄養素なので、動物性食品を食べないヴィーガンは不足しやすくなります。
ただし、ビタミンB12は海苔や大豆の発酵食品などにも含まれています。
それらの食品を多く摂取し、足りない分はサプリメントで補うなど、食事計画をきちんと立てれば、ビタミンB12が欠乏することはありません。
ヴィーガンは本当に健康的なのか
栄養と食事のアカデミー(旧アメリカ栄養士会)の見解では、ヴィーガンを含む菜食主義者の食事は、栄養は十分で、体に悪影響があるとはみなされていません。
また、菜食主義者は、肥満や糖尿病、虚血性心疾患、高血圧、消化器がんのリスクが低いとも述べられています。
しかし、ヴィーガンの食生活はかなり面倒なことが多く、精神的なストレスによって病気になるという恐れはあるので、精神面も加味して健康的かといえば、個人差があるとしかいえません。
ヴィーガンよりも厳しいフルータリアン
フルータリアンは日本語では「果実食主義者」や「果食主義者」と訳されます。
収穫した植物の命を断つことも避けたい考えをもつ菜食主義者で、生死には影響しない果実のみを食べる人達です。
穀物や根菜は植物の命を奪うことになるため、フルータリアンは食べるのを避けます。より厳格なフルータリアンになると、地面に落ちた果実のみを食べます。
フルータリアンともなると、タンパク質の摂取は難しく、不足しやすいです。また、発育期に必要栄養素が不足する危険があるため、児童のフルータリアンは好ましくありません。