お寿司屋さんのシャリってどうなっているの?
「小池さんのところには寿司向きのお米がたくさんあるんだって?」
最近、プロの方から問い合わせが多くあります。
皆さんの大好きなお寿司。ネタが主役のように思われますが、実は違います。寿司はネタとシャリを口の中で融合させて味が完成する料理です。その味こそがそのお寿司屋さんの「世界観」なのです。
お寿司屋さんは修行先の店で使っていた米をそのまま使うことが多いようです。ところが最近は「自分の世界観」を表現するために、「米」に注目する職人が増えてきました。
今まではネタや寿司の握り方、シャリの味付け等で他のお店との差別化を図ってきました。しかし、シャリとなる「米」そのものは手付かずだった…ことに皆さん気付き始めたのです。
かの有名な国民的グルメ漫画「美味しんぼ」。実は筆者は全巻読破してますが(笑)、100巻以上の単行本のなかで、寿司を題材にした話はたくさんあります。しかし論点はネタや握り方の話ばかりで、「寿司に合う米は何か?」に触れたことは一度もありません。
これこそが「寿司に合う米」にまで気が回らない人が多い証左です。
「寿司に合う米は古米がいい」「粘らない方がいい」など言われます。しかし大事なのは「大将がどのような寿司を目指しているのか」です。米の選択はあくまでもその理想に至る方法論にすぎません。
弊社のお客様では新米を使う寿司屋さんもいます。大将曰く「ウチは香りの強い赤酢を使っている。それに負けないような新米の香りが必要なんだ」と。
ここで私がお寿司屋さんに提案する流れをご紹介しましょう。以下実例です。
Step1:ヒアリング…大将「粒は大きめがいい。もっちりしていて、しかしアルデンテ」
Step2:小池よりサンプル提示…例:里山のつぶ、たかたのゆめ、さがびより
Step3:感想をヒアリング…「さがびよりは問題なかったが、時間が経つとダマになる」
Step4:再度サンプルを提示…ブレンドA(さがびよりベース)、B(里山のつぶベース)、C(たかたのゆめベース)、D(つや姫ベース)
Step5:再度感想をヒアリング…Aが最もいい。全く問題ない!
このように数回キャッチボールをするのです。
お寿司屋さんのなかにはもっとこだわったお店があります。曰く「水の温度や室温、その日の魚の仕入れによってシャリの味を変えたい」ということで、自分で都度ブレンドしている人もいるのです
みなさんがお寿司屋さんに行かれた際にはぜひ大将にシャリのこだわりに聞いてみてください。そのお店のこだわり具合の一端が分かると思います。
1971年、原宿生まれ。1995年、明治大学卒業後、出版社で編集者として勤務。2002年、社会保険労務士の資格を取得し、人事制度コンサルティングファームに入社。2006年、小池精米店を継ぐ。
2013年、五ツ星お米マイスターの資格を取得。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。共著「ごはん検定公式テキスト」(実業之日本社)。共著「お米の世界へようこそ!今日からあなたもごはん党
」(経法ビジネス出版)
【ネットショップ】 三代目小池精米店
【連載】米は『研ぐ』ではなく『洗う』です