後期高齢者(75歳以上)の食と健康に関する実態調査を発表

■ 高齢者の2人に1人が、“フレイル”の疑いあり
フレイルの疑いがあるかどうかを確認するため、生活や健康状態をチェックする「基本チェックリスト(厚生労働省作成)」に回答してもらったところ、フレイルが疑われる人が59%、非フレイル(フレイルの疑いがない人)が41%という結果になり(図5)、75歳以上の約2人に1人がフレイルの疑いがあることがわかりました。フレイルは、健常と要介護の中間段階と言われています。
図5

■ 食とフレイルは密接な関係か
高齢者の半数以上にフレイルの疑いがあると思われる中、以下の結果から、フレイルの疑いがある人は“粗食志向”が強く、食事量が少なく、食の悩みを持っていることが読み取れます。

・フレイルの疑いがある人の約8割が“粗食が大切である”と信じていた
「あなたは、健康のためには、食事量やカロリーを摂りすぎない「粗食」が大切であると思いますか。」という質問に対するフレイルの疑いがある人の回答をみると、「はい」が80%、 「いいえ」が20%という結果でした。(図6)
図6

・フレイルの疑いがある人の約7割が自ら食事量を減らしていた
フレイルの疑いがある人に食事量について質問したところ、「量を減らしている(8%)」と「量を少し減らしている(62%)」と回答した人が合わせて70%という結果でした。(図7)
図7

・食に対する悩みが、フレイルの疑いがある人は、非フレイル(フレイルの疑いがない人)の1.5倍あった
「あなたが、食生活について悩んでいることを選んで回答ください。」という質問(MA)2)について、悩みの合計数値をフレイルの疑いがある人と非フレイル(フレイルの疑いがない人)とで比較すると、フレイルの疑いがある人は136%、非フレイル(フレイルの疑いがない人)は88%と、フレイルの疑いがある人のほうが多い結果となりました。(図8)
具体的な悩みとしては、「メニューを考えるのが面倒」、「特定の食材ばかりを食べてしまう」といった食事の準備が億劫になる傾向があるほか、「食事をするときにむせることがある」、「食事量が減って空腹を感じにくくなった」など身体的な不具合が出現しているのが特徴的だといえます。
図8

■ 調査概要
調査名:75歳以上の食と健康に関する実態調査
調査期間:2019年6月
調査手法:インターネット調査
調査数と対象:①75歳以上の男女500名、②75歳以上の同居家族を介護・支援する男女500名、③管理栄養士200名
1)SA(シングル・アンサー)
ひとつの質問に対して、複数選択肢を示してそのなかからひとつの回答を選択させる回答形式
2)MA(マルチプル・アンサー)
ひとつの質問に対して、複数選択肢を示してそのなかからあてはまるものをひとつ以上いくつでも選択させる回答形式

参考資料
■ 東口 髙志先生コメント

(一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会 理事長 / 一般社団法人WAVES Japan 理事長/
藤田医科大学医学部 外科・緩和医療学講座 主任教授)
今回の結果では、わが国の75歳以上のほとんどの方が、必要とされる食事量に足りていないこと、その原因が「高齢者でも粗食が大切」とする間違った認識の浸透によることが明らかにされました。確かに、壮年層での肥満は生活習慣病発症の高リスク因子です。しかし、過度の痩せや高齢者の低栄養は、逆に生活の質を低下させ、要介護度を増し、疾病からの回復遅延さらには寿命の短縮につながってしまうのです。
現在、世界で最もホットな話題のひとつは、「高齢者の低栄養」です。これまで、体重(Kg)/身長(m)/身長(m)で算出されるBody Mass Index(BMI)が22の人が最も長生きし、これを越えると肥満から糖尿病などをきたしやすくなるため、BMI高値の方は早期死亡のリスクが高いといわれてきました。しかし、最近のデータでは、欧米ではBMIが27の人が最も長生きするとの結果が示され、これまでとは全く逆に、痩せている人の方が高リスクであることが明確にされました。私たちは、BMI低値で示される低栄養は、特に高齢者では四肢の筋肉である骨格筋量や筋力が減衰するサルコペニア、またそれに伴って全身が衰弱して生活力が損なわれるフレイルの大きな原因となることを指摘してきました。そして、その予防策として、高齢者が各地域でいきいきと生きていけるように一般社団法人WAVES Japan(ウェイブズ ジャパン)という全医療職が集まり社会栄養学を実践する集団を組織して、低栄養の怖さとその回避方法を様々なところで啓蒙してまいりました。
是非とも、皆さまには特にたんぱく質エネルギーを始めとした栄養を十分に摂取して楽しい老後をお過ごしいただき、いきいきと生ききっていただきたいと思います。

■ ネスレ ヘルスサイエンス
世界の「栄養・健康・ウェルネス」のリーダー企業であり続けることを目指すネスレグループが展開する、先端的かつ中核の事業。新たな健康管理法の推進を目指し、お客様や医療従事者に対して、「栄養の力」を上手に引き出して総合的に健康をサポートする「栄養療法」を提案している。日本では特に、医療機関において特別な栄養ケアが必要な方への集中的な栄養管理や、介護現場での高齢者向けの栄養管理のための栄養補助食品を展開している(約10,000軒の医療機関や高齢者施設での展開実績あり)。さらに、医療・介護現場で培った知見や開発力を一般消費者向け商品にも活かすことで、高齢化が進む社会へのソリューションを提供することにも取り組んでいる。
http://www.nestlehealthscience.jp/