「精米したて」が美味しいのでは、無い。
前回触れた「美味しさジャンクション」ですが、今回は「収穫後」から「購入」まで、です。
お米は実は生鮮食品って知ってました?ビニール袋に入っていると加工品のように思われますが、よーく見て下さい。袋には「精米年月日」は記載されていても「消費期限」は記載されていません。
お米は収穫後、「保存」のため乾燥させます。だからカチンコチンなのです。昔は「はざ架け」で乾燥させていましたが、今は大きな機械で、遠赤外線を使っています。この「自然乾燥」か「機械乾燥」か…。ここは大きな「美味しさジャンクション」です。自然乾燥の方が米粒にストレスがかからず味が損なわれません。
「天空米」って知ってますか?新潟県内のある地域のお米ですが乾燥方法がなかなかにシュール。休業中のスキー場のリフトに収穫した稲をくくりつけて稼働させます。
そうすることにより「風」による乾燥が出来るのです。「乾燥」一つとってもこんな展開があるのですから、お米は本当に奥が深いですね。
お米の保管も大事です。乾燥させたのち、籾摺り(籾からもみ殻を外し玄米にすること)をして袋に入れて出荷されます。
ところが、新米時期にすべての玄米が精米されるわけではありません。倉庫に保管されて精米される日をひたすら待つお米もあります。この倉庫の気温と湿度も重要。気温15度以下、湿度70~80%の環境下に置くと、それこそ数年たっても美味しさを保てるのです。
「雪室米」って知ってますか?これは雪の多い地域で見られるお米です。
保管庫の温度と湿度を保つために、冬に大量に降った雪を倉庫に入れて活用するのです。雪室で保管されたお米は旨みがギュッと引き締まり、新米時期よりも春先の方が美味しくなるのです。
そして精米。精米は玄米を白米にする工程ですが、単に糠層を削る…だけでは無いんです。
玄米の糠層は「果皮」と呼ばれます。このうち、ある程度薄皮を残すようなイメージで精米します。この薄皮を亜糊粉層(あこふんそう)と言います。ここには旨味成分のアミノ酸が豊富に含まれています。
産地からもらった玄米をコイン精米機でボタン一つで精米している人がいますが、「美味しさジャンクション」からすると間違った方向を選んでいます。
精米したてが美味しいのではありません。上手に精米したお米が美味しいのです。
皆さんが目にすることのない世界ですが、このようにご家庭に届くまで「お米の美味しさ」には様々な分かれ道があるのです。
ライター:小池 理雄