日本人の中高齢者で、カレーの長期的かつ頻繁な摂食と良好な認知機能との関係を確認
ハウス食品グループ本社株式会社は東京大学 五十嵐中客員准教授、二松学舎大学 小久保欣哉准教授との共同研究で、カレーを長期的かつ頻繁に摂食する食習慣は良好な認知機能と関係していることを確認しました。日本人対象の疫学研究では初となる結果です。この研究成果を2021年11月21日に御堂会館(大阪市中央区)にて開催された第28回 日本未病学会学術総会で発表しました。
■研究の背景
日本の国民食とも言えるカレーには健康増進に効果があるとされる様々なスパイスが用いられており、実際にスパイス由来の抗酸化物質や抗炎症物質が多く含まれていることから、健康に良い食品と考えられます。当社でもカレーの健康効果に関する研究に取り組んでおり、2019年にはカレー粉およびカレーに含まれる複数のスパイスに、PM2.5による炎症反応を抑える効果を確認しています(参考ページ参照)。
今回の研究にあたり、当社ではカレー摂食頻度の高い高齢者で認知機能が良好に保たれていることがシンガポールの疫学研究の結果として報告されている1)ことに注目しました。カレーの摂食は良好な認知機能と関係する可能性が考えられましたが、食べられているカレーの種類、喫食状況、人種などがシンガポールと日本では異なるため、日本人においても同様の傾向が確認されるかは不明でした。そこで今回、日本人の中高齢者を対象に、カレーの摂食状況が良好な認知機能と関係があるかを調査しました。
■研究概要
50歳以上の一般生活者を対象に、「調査直前1年間」(短期)と「成人以降で調査1年前まで」(長期)のカレー摂食頻度について、認知機能との関係を明らかにしました(図1)。調査直前1年間のカレー摂食頻度に基づき、月2回以上を「高頻度群」、月2回未満を「低頻度群」とし、両群間で性別、年齢、Body Mass Index、Charlson Comorbidity Index(併存疾患の指数)、職業の分布が等しくなるよう層別マッチングを行い、各群1002人ずつを対象としました。認知機能の測定には、認知症の総合的アセスメントツールであるDASC-21を用いました。DASC-21の合計点を被説明変数、カレー摂食頻度やそれ以外の生活習慣(直近3か月間の喫煙習慣、直近1年間の運動習慣、食習慣「半定量食物摂取頻度調査票」、年収)を説明変数として多変量解析(ポワソン回帰)を行いました。調査はメディリード株式会社に委託して行いました。
1.長期のカレー摂食頻度では、「月1回未満」を1とした場合の認知機能スコアのリスク比が「月1回」で0.834、「月2~3回」で0.754、「月4回以上(週1回以上)」で0.718と有意に低くなりました。すなわち、長期のカレー摂食頻度が高いほど、認知機能が有意に良好でした(図2)。一方で、短期のカレー摂食頻度と認知機能の間には関係が見られませんでした。
2.短期のカレー摂食頻度「高頻度群(月2回以上)」だけ、または「低頻度群(月2回未満)」だけでも同様の解析を行いました。高頻度群においても、長期の摂食頻度が「月1回未満」より「月1回」で有意に認知機能が良好であることが分かりました。一方で、低頻度群では長期のカレーの摂食頻度と認知機能との間に関係が見られませんでした。長期のカレー摂食頻度と認知機能との関係については、短期のカレーの摂食状況も重要であることが分かりました。
■まとめ
日本人の中高齢集団において、カレーを長期的にかつ高頻度に摂食してきた習慣は良好な認知機能と関連する可能性が示唆されました。 カレーの食習慣が認知機能維持に寄与している可能性が考えられたため、今後カレー摂食が認知機能に及ぼす影響について詳細に検討する予定です。また、カレーやスパイスの摂食が他の健康機能に及ぼす良い影響についても継続して研究を行います。
1) Ng TP, Chiam PC, Lee T, Chua HC, Lim L, Kua EH., Curry consumption and cognitive function in the elderly, Am J Epidemiol. 2006 Nov 1;164(9):898-906. doi: 10.1093/aje/kwj267. Epub 2006 Jul 26.,PMID: 16870699