工夫は88では収まらない?!
「美味しさジャンクション」という言葉をご存知ですか?…僕の造語です(笑)。
お米が食卓に上るまでに通り過ぎるいくつかの分岐点で正しい選択をした結果、私たちは美味しいお米に出会えるのです。その分岐点を、僕はこう呼んでいるのです。
例えば皆さんであれば「精米年月日の確認」「保管方法」「炊飯器の選択」「水の選択」…など様々です。
今回は「生産者サイドでどういった分岐点があるのか」について触れてみましょう。
日本中に広がっている田んぼの風景。実はその穏やかな風景の裏には生産者の様々な工夫が「ぎっちり」と詰まっています。
「稲作には八十八の手間がかかる。だから『米』と書く」と言いますが、実際にはそれだけではすまない、実に様々な工夫がなされています。
私は毎年産地見学に行きます。そしてそのたびに数々の衝撃?的な工夫に出会います。それを知るたびに「これはお客さんに話すいいネタをもらった」とほくそ笑んでいるのですが…。いくつかご紹介します。
①種もみを温泉に漬ける?!
種もみを温泉に漬けるといい気分になって元気になる…ではなく、これはお湯を使った「殺菌」なのです。普通はただのお湯ですが、せっかくだから地元の温泉で…という地域があるのです。
②雪塩とはちみつ?
ある生産者さんは肥料として宮古島の雪塩とはちみつと鰹節エキスを混合したものを田んぼに噴霧しています。ミネラル分を肥料として使うと食味が増すのですが…。最初に宮古島に問い合わせをしたときはかなり怪しまれたそうです。
③合鴨に何をさせるの?
合鴨を田んぼに放っている人がいます。これは合鴨に雑草を食べさせているのです。それにより農薬の使用を抑えることができるのです。ちなみに合鴨は自分より背の高い草は食べないので、田植え直後に放すときはまだヒナの段階です。なので成長した合鴨は翌年には使えないので、そのまま蕎麦屋に直行だとか…。
④田んぼで熟成させる?
わざと刈り取り時期を遅くする人がいます。これは茎の養分を完全に籾に行き渡らせるため、だということです。実はこの方法にか懐疑的な生産者が多いのですが、しかしこの人が出荷する玄米は毎年安定してきれいな色をしているのです。
稲は自然のものですから何が正しいかは分かりません。それでも「こちらに行けば美味しくなるに違いない!」と生産者は様々な工夫で「美味しさジャンクション」を突き進んでいるのです。
ライター:小池 理雄